ヘルスケア
脳の病気予防においては、誰もが定期的に脳スキャンを受けられることが理想的です。しかし、これまでロジスティック上の課題により実現が困難で、米国内すべてのMRI装置を集めても、認知症やその他の疾患予防に向けた定期的なスキャンを行うには不十分でした。Kernel社は、このような課題の解決に取り組みました。
Kernel Flowは、医療に必要な規模の高分解能データを収集する脳活動記録デバイスです。脳の中でも特に発達が進んでおり、ほとんどの認知能力を司る大脳皮質だけをスキャンします。
Kernel社は、性能や消費電力とのトレードオフを考慮しつつ、医療従事者がKernel Flowの優れたポータビリティや使いやすさを活用できるように取り組んでいます。Kernel Flowは、通院が難しい患者や、MRIスキャンを受けられない患者にとってきわめて有用です。Kernel Flowにおいて、快適で医学的に正確なスキャンを行うために必要となる性能と消費電力の最適なバランスを実現する上で、STのファンドリ・サービスが大きく貢献しました。
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光学ベースの非侵襲型ニューロイメージング・システムの開発に着手した時、この構想が実現可能かどうかさえ分かりませんでした。しかし、厳密な技術調査を通じて、STのイメージング・ファンドリ・サービスが変革を生み出すプロセス技術を提供していることがわかりました。
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Ryan Field博士, Kernel社 最高経営責任者(CEO)兼 最高技術責任者(CTO)
Kernel社が創業された2016年当時、症状がない限り、脳の検査を行う人はほとんどいませんでした。当時の技術環境は、多くの人にとって実用性がないきわめて侵襲的な技術と、運用コストが高い正確な医療技術との間で二分されており、Kernel社は、ここにビジネス・チャンスを見出しました。しかし、消費者にアピールするためには、fMRI(機能的MRI)やEEG(脳電図)にならぶ医療レベルの精度をKernel Flowで実現する必要がありました。
時間領域NIR分光法により、臨床ソリューション相当の性能を備えつつ、使用場所に関して高い柔軟性を備えたニューロイメージング・ソリューションを提供できました。しかし、ここに至るまでにさまざまな課題もありました。Kernel社の最初の設計には、単体で100ミリワット以上の電力を消費するセンサが312個含まれていました。
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MPWプログラムは、リスクとコストを大幅に削減し、当社の画期的なイノベーションを可能にする技術として、STが極めて重要な役割を果たしていることを証明しました。
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Ryan Field博士, Kernel社 最高経営責任者(CEO)兼 最高技術責任者(CTO)
Kernel社はSTとパートナーシップを結び、STの最先端のプロセス技術とマルチ・プロジェクト・ウェハ(MPW)プログラムを活用することで、これらの課題解決に取り組みました。STの協力により、各センサに優れた演算性能とカスタム・アルゴリズムを組み込み、データ・レートを効率的に高速化することができました。これにより、Kernel Flowの外部電源に対する依存を最小限に抑えるだけでなく、患者にとっての快適さも向上しました。また、STのテクノロジーにより、Kernel社はデータ帯域幅要件を1,000,000分の1に縮小し、データ圧縮と暗号化の両方を1ステップにまとめて効率化することができました。
Kernel社は、STとのパートナーシップを継続しつつ、さらなる低消費電力化に向けた取り組みを進めています。Kernel Flowは、次世代医療の標準として、あらゆる医療の場で普及していくでしょう。