STマイクロエレクトロニクス、相変化メモリを内蔵した車載用マイコンのサンプル出荷を開始
- 革新的な組み込み型相変化メモリ(ePCM)を搭載した車載用マイコンのサンプル出荷を開始
- 初期性能のベンチマークを2018 IEDMにて発表
- 車載システムに要求される高速かつ複雑な演算処理に対応
多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(NYSE:STM、以下ST)は、2018 International Electron Devices Meeting(IEDM)において、車載用マイクロコントローラ(マイコン)向けに設計された28nm FD-SOI技術と組み込み型相変化メモリ(ePCM:embedded Phase-Change Memory)に基づくアーキテクチャと性能ベンチマークについて発表しました。STのePCM搭載マイコンは、主要顧客向けに現在サンプル出荷中で、車載アプリケーション要件への適合試験や総合的な信頼性評価を2020年までに完了することを目指しています。この車載用マイコンは、世界で初めてePCMを使用した製品で、パワートレイン・システム、先進的なセキュア・ゲートウェイ、走行安全および高度運転支援(ADAS)システム、車両の電動化などのアプリケーションを対象にしています。
より高い要件が車載システムに求められる中、処理能力の向上、消費電力の削減、メモリの大容量化など、新しい車載用マイコン・アーキテクチャが期待されています。特に重要な課題の1つが、ファームウェアの大幅な複雑化とサイズ増加に対応する内蔵メモリの大容量化です。AEC-Q100 Grade 0に準拠し、動作温度範囲が最高+165°CのePCMは、この課題をチップレベルおよびシステムレベルで解決します。また、STの技術により、リフローはんだ付けを想定した高温環境下や放射線下におけるファームウェア / データ保持力が確保されているため、データの安全性がさらに向上します。
STは、サンフランシスコで開催された2018 IEDM(2018年12月4日)において、28nm FD-SOI技術を採用した車載用マイコン向けePCMアレイ(16MB)の最新アーキテクチャならびに性能について発表しました。
STのオートモーティブ & ディスクリート グループ社長であるMarco Montiは、次のようにコメントしています。「STは、高性能かつ低消費電力の車載用マイコンを実現するために、プロセス、設計、技術およびアプリケーション面でのノウハウをePCM開発に生かすことで、この不揮発性メモリを28nm FD-SOIプロセスに組み込むことに初めて成功しました。当社は、主要顧客向けにサンプル出荷が開始されているePCMの優れた温度特性とあらゆる車載規格に対応する性能を確認しつつあり、今後市場に普及していくことを確信しています。」
技術情報
ゲルマニウム・アンチモン・テルル(GST)合金製の相変化メモリ(PCM)は、急速な加熱・冷却制御により、GSTがアモルファス(単結晶)相と多結晶相にそれぞれ変化する材料特性を利用しています。電気抵抗の異なるこの2つの相が論理値0と1に対応しており、高抵抗状態のアモルファス相が論理値0、低抵抗状態の多結晶相が論理値1となります。さらに、書込み前にバイト単位またはセクター単位で一括消去する必要があるFlashメモリと異なり、PCM技術は1bit単位での書き変えが可能なため、データ記録におけるソフトウェア処理を簡略化できると共に、メモリ・セル単体とGST合金に関するSTの特許取得済み技術を活用することで高温でのデータ保持力を実現しています。