STマイクロエレクトロニクス、 Bluetooth® Low Energy用の新しい1チップ・ソリューションを発表
- 新しいBlueNRG-1が、低消費電力かつ高信頼性の無線通信を実現
- 小売店、住宅、ウェアラブル機器、医療機器、車載機器、産業機器など、市場で高まるBLEのニーズに対応するSoC
多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(NYSE:STM、以下ST)は、Bluetooth® Low Energy(BLE)に対応した通信用システム・オン・チップ(SoC)であるBlueNRG-1を発表しました。優れた電力効率と無線通信機能を特徴とする同製品は、急成長を続けるBLE市場の大きな需要に対応する最適なソリューションです。
BLEは、ウェアラブル機器や小売店等に設置されるビーコン、スマートキーシステム、スマート・リモコン、アセット管理および産業・医療用モニタといった、消費電力に制限のあるネットワーク接続型デバイスに理想的な技術です。ABI Research社によると、BLEに対応したIoT機器の2021年までの年間平均成長率は34%で、出荷数は約14億個になると予測されています(1)。これは、BLE機器を操作する上で便利なユーザ・インタフェースとなるBluetooth対応のタブレットフォンやスマートフォンの普及によるものです。
BLE機器には高い電力効率が求められ、バッテリ駆動時間を延ばすために頻繁に使用されるスリープ・モードやスタンバイ・モードの消費電力は、非常に低く抑える必要があります。また、通知機能や接続の信頼性を確実にするために、高性能な無線通信機能も求められます。STが開発したプログラム可能なSoCであるBlueNRG-1は、このような性能と消費電力に対する要件をサポートします。
BlueNRG-1が搭載する無線トランシーバ機能は、例えば買い物客のスマートフォンにセール情報を送信する短時間のビーコン通信など、頻繁に使用する通信モードでも消費電力を最小限に抑えます。同製品は、省電力モードと動作モードを高速に切り替えることができるため、数カ月のバッテリ寿命を数年にまで延ばすことができます。さらに、RF出力パワーを最大+8dBmに設定可能なため、ノイズの多い環境下でも、クリアで安定した通信を最適な効率で実現することができます。
STの上級副社長 兼 アナログ & MEMSグループ ジェネラル・マネージャであるBenedetto Vignaは、次の様にコメントしています。「小売店、住宅、自動車、産業、医療、電子決済などの分野において、新たなアプリケーションが成功するかどうかは、とりわけユーザ体験の品質に依存しており、この品質向上には効率的なBLEソリューションが必要になるでしょう。BlueNRG-1は、既存ソリューションに比べて、オーバースペックでも高コストでもなく、バッテリ寿命の長期化と通信の高信頼性を最適な性能で実現する、IoT機器の開発者にとって理想的な1チップ・ソリューションです。」
高性能かつ低消費電力に加えて、BlueNRG-1は、機器開発に役立つ付加価値も提供します。これらの付加価値には、音声操作対応アプリケーション用のデジタル・マイク入力や、スマート・ライティングおよび車載機器(パッシブ・エントリ・パッシブ・スタート、自己診断デバイスなど)に最適な動作温度範囲(最高105°C)が含まれます。また、同製品は、最新のBLEバージョン4.2に対応しているため、最先端のプライバシー保護とセキュリティが保証されます。
BlueNRG-1は、2016年7月に量産が開始され、2種類のパッケージで提供される予定です。単価は、QFN-32パッケージ(5 x 5mm)で提供されるBlueNRG-132が約1.50ドル、スペースに制約のあるアプリケーションに適したWLCSP-34パッケージ(2.7 x 2.6mm)で提供されるBlueNRG-134が約1.45ドルです。
技術情報
BlueNRG-1は、32bit ARM® Cortex®-M0(32MHz)を搭載したシングル・コアSoCで、ミリワットの電力で十分な性能を発揮します。内蔵Flashメモリ(160KB)にアプリケーション・コードおよびデータを保存し、BLEのファームウェア・スタックをアップグレードすることが可能です。また、ウェイクアップとスリープの高速切り替えや卓越した低スタンバイ電流(1µA以下)など、実績のあるSTの超低消費電力設計を採用しています。
STの実績あるBLEスタックが、ライブラリでBlueNRG-1向けに提供されています。リンク可能なライブラリをビルド時に使用することで、スタックの未使用部分が取り除かれるため、メモリを効率的に使用できます。医療機器や近接モニタなどの機器向けに、認証済みのプロファイルや、iOS® / Android™端末向けのアプリ開発をサポートするツールと販促資料も提供されます。
さらに、設計の簡略化と部品点数の削減を可能にする重要なペリフェラルとして、10bit ADコンバータ(ADC)、SPI・I2C対応マスタ /スレーブ・ユニット、UART、パッケージ・タイプに応じて最大15本まで設定可能なI/Oなども備えています。
BlueNRG-1は、トランシーバの平衡信号とシングルエンド・アンテナ信号間の変換に幅広く使用されている、STの1チップ・バランと直接接続することができます。小型のQFNパッケージで提供されるこのバランは、STの集積型受動部品技術(IPD-on-glass)を用いて9個の受動部品を1個のチップに集積しており、基板面積の削減、設計の簡略化、開発期間の短縮、および無線通信性能の向上を実現します。
BlueNRG-1を使用する設計者は、API付属のソフトウェア開発キット(SDK)、センサ・ドライバ、サンプル・アプリケーションなど、包括的な開発エコシステムを利用することができます。BLE対応機器では消費電力の把握が重要となるため、消費電流予測ツールも提供されます。このツールは、変動要因(送信出力パワー、マスタ / スレーブのスリープ・クロック精度、RAMのリテンション特性、接続の通知やスキャニングの間隔、データ長、DC-DCコンバータの動作など)による消費電力への影響の評価に役立ちます。
STマイクロエレクトロニクスについて
STは、私たちの暮らしに欠かすことのできないエレクトロニクス機器に、優れた性能と高い電力効率を特徴とした半導体を提供する世界的な総合半導体メーカーです。あらゆるシーンで活躍するSTの製品は、お客様が開発する次世代モバイルやIoT機器の他、よりスマートな自動車、工場、都市および住宅を可能にします。STは、生活をより豊かにする技術革新を通じ、「life.augmented」の実現に取り組んでいます。STは、10万社を超えるお客様に半導体を提供しており、2015年の売上は69.0億ドルでした。さらに詳しい情報はSTのウェブサイト(http://www.st.com/jp)をご覧ください。
(1)出典 : ABI Research社 「Wireless Connectivity in IoT, April 14, 2016」