19 Oct 2017 | Geneva

STマイクロエレクトロニクス、ウェアラブル機器向けのセキュア決済機能を拡張するboostedNFC™技術を搭載した小型非接触モジュールを発表

  • 小型の非接触無線通信ブースタとセキュア決済用ICを1パッケージに集積しサイズの制約を解決
  • 業界最先端のソリューションによる小型アンテナで、ユーザの利便性を向上
  • 豊富なソフトウェアやツールを含む開発エコシステムにサポートされたシステム・イン・パッケージがセキュリティとカード業界の規格に準拠
Geneva / 19 Oct 2017

多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(NYSE:STM、以下ST)は、身の周りのリストバンドや時計・ジュエリーなどのアクセサリに、簡単かつセキュアな非接触決済機能を実装する独自技術のST53Gシステム・イン・パッケージ(SiP)ソリューションを発表しました。同製品には、近距離無線通信(NFC)とセキュア決済用ICに関してSTが有する業界最先端の専門性が統合されています。

STマイクロエレクトロニクス、ウェアラブル機器向けのセキュア決済機能を拡張するboostedNFC™技術を搭載した小型非接触モジュールを発表

現在、消費者の間では、スマート機器を通じたセキュア決済が普及しています。そのため、既存のカード・メーカーはサービス拡張を行い、ウェアラブル機器で支払いやチケット発行、アクセス制御などの非接触型決済を行いたいと考えています。しかし、従来の技術ではNFC無線通信とセキュリティでそれぞれセキュア決済用ICが必要であることに加えて、余分なスペースと複雑な設計が必要となるため、限られたサイズとコストで実装を行うことは困難です。さらに、小型のアンテナを使用する制約があるウェアラブル機器では、通信性能が制限される可能性もあります。

STの新しいST53G は、小型で高性能なNFC無線通信と、セキュア決済用ICを1つのコンパクトなモジュール(4 x 4mm)に集積しているため、これらの課題を解決できます。STの業界最先端かつ独自のboostedNFC™技術を活用することで、小型のアンテナを搭載したウェアラブル機器でも、標準的な通信距離でカード・リーダと通信した場合と同様の優れたユーザ体験を実現することが可能です。

オールインワンのモジュールを利用することで、カード・メーカーは、ファッション・アイテムからイベント用のリストバンドのような使い捨てのアクセサリまで、機能的かつ魅力的なウェアラブル機器を、迅速かつ簡単に導入することができます。そのほか、無線のチューニング・ツールや事前調整済みのアンテナ設定など、充実した開発エコシステムの利用が可能です。また、ST53Gは、EMVCo™、ISO/IEC-14443 NFCカード・エミュレーション、MIFARE® チケット発行仕様など、カード業界に関連したあらゆる規格に準拠しています。

ST53Gは、STPayスマートカード・オペレーティング・システムと、セキュア・マイコンに実装されたVISA / Mastercard / JCB認証済みバンキング・アプリケーションをすぐに動作させることができます。

STのセキュア・マイクロコントローラ事業部 マーケティング・ディレクターであるLaurent Degauqueは、次のようにコメントしています。「当社のチップ・モジュールにより、使い捨てのアクセサリからファッション・アイテムまでの広範なウェアラブル機器でセキュアな決済が可能になることで、非接触型の決済・チケット発行の利用はさらに広まります。当社は、すでにST53Gを搭載した新製品を顧客と協力して開発しており、市場に導入しやすい利用方法を開発するためのサポートも行っています。」

ST53G は現在サンプル出荷中で、WFBGA64パッケージ(4 x 4mm)で提供されます。2018年第1四半期に量産を開始する予定です。詳しい情報および価格については、STのセールス・オフィスまたは販売代理店までお問い合わせください。

技術情報

セキュア決済用 ICを内蔵したST53Gシステム・イン・パッケージ(SiP)は、ARM® SC000 SecurCore®プロセッサ搭載のST31G480セキュア・マイコンを活用して、高性能なスマートカード・アプリケーションを実現します。このSiPは、公開鍵暗号用のNESCRYPTコプロセッサと、AESやトリプルDESなどのアルゴリズムを実行するハードウェア・アクセラレータを備えたセキュリティ・アーキテクチャを採用しています。また、耐タンパ性を高める保護機能(アクティブ・シールド、環境モニタ、各チップが持つ固有のシリアル・ナンバーのほか、多数の攻撃に対する保護機能など)を持っています。これらの機能が、SC000コア上で動作するソフトウェア・ベースのセキュリティを補完し、ユーザの認証情報を強力に

保護します。
非接触ICであるSTS3922 RFブースタは、アクティブ負荷変調(ALM)を使用して、カード・エミュレーション・モードでの通信範囲と無指向性無線通信の性能を最大化します。これにより、小型アンテナを使用しても、機器・リーダ間位置の許容範囲を従来の非接触スマートカード以上に大きくできるため、利便性の高いウェアラブル機器を実現します。またST53Gは、最低限の追加コストで小型アンテナを基板上に形成しているため、最終製品のコストを最適化できます。一般的に難しいとされる金属ケースの使用も、ケース自体をRFアンテナの一部として利用することで可能となります。さらに、消費電力とゲインの自動調整、感度調整、信号 / リーダ間電界の位相差調整などの機能により、あらゆる範囲にわたり安定した通信を実現する一方、各種交通機関のチケット発行システムなど、さまざまなリーダおよび端末との相互接続性を向上させます。低消費電力を特徴とするセキュア・マイコンであるSTS3922と、専用のウェイクアップ出力により、ST53Gは未使用時の電源をオフにできるため、バッテリ駆動時間を最大化できます。

ST31G480セキュア・エレメントはEMVCoとCommon Criteriaに準拠しています。また、STS3922はISO/IEC 14443とEMVCoレベル1に準拠しているため、既存の決済およびチケット発行インフラに対応し、完全な相互接続性を得ることができます。

無線チューニング・ツールに加えて、さまざまなウェアラブル機器のアーキテクチャにカード・サービスを実装するソフトウェア開発キット(SDK)プラットフォームのほか、リファレンス設計、拡張ボード、事前認証サービスも提供されるため、ユーザは開発の簡略化と製品開発期間の短縮が可能です。