30 Oct 2018 | Geneva

STマイクロエレクトロニクス、コネクテッド・カー向けにセキュアな遠隔更新と高速車載ネットワークを実現する新しい車載用32bitマイコンを発表

  • 大容量の内蔵メモリと、OTAによるECUソフトウェアのセキュアな更新が、自動車メーカーによるメンテナンスの効率化と機能拡張を実現
  • 高速車載ネットワークを可能にするギガビットと100メガビットのイーサネット・ポート
  • EVITA Full(1)準拠のハードウェア・セキュリティ・モジュールにより、自動車および搭乗者の安全を維持
Geneva / 30 Oct 2018

多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(NYSE:STM、以下ST)は、最新の高性能マルチ・コアおよびマルチ・インタフェースを搭載した新しい車載用32bitマイクロコントローラ(マイコン)を発表しました。同製品は、コネクテッド・カーの安全性と柔軟性を向上させるとともに、将来的な変化に対する柔軟な対応を可能にします。

STマイクロエレクトロニクス、コネクテッド・カー向けにセキュアな遠隔更新と高速車載ネットワークを実現する新しい車載用32bitマイコンを発表

自動車の重要な機能であるパワー・トレイン、ボディ、シャーシおよびインフォテインメントは、これまで以上にソフトウェアで制御されるようになっています。これらの修正プログラムやオプション・パックなどをOver-The-Air(OTA:無線通信)でセキュアに更新することで、コスト効率とユーザの利便性を向上させることが可能です。最新の車載用32bitマイコンであるSPC58 Hラインは、最先端のセキュリティに加え、大容量の内蔵コード・ストレージを備えており、OTAによる主要な更新をセキュアに実行できる、業界初のゲートウェイ / ドメイン・コントローラ・チップの1つです。

STの新しいSPC58 Hラインは、3個の高性能プロセッサ・コア、1.2MB超のRAM、および強力な内蔵ペリフェラルを備えた車載用32bitマイコン「Chorusシリーズ」の新製品で、同時に複数のアプリケーションを実行できます。そのため、車載用の電子機器において、柔軟性とコスト・パフォーマンスに優れたアーキテクチャを実現することができます。また、2つの独立したイーサネット・ポートにより、車内のあらゆるChorusマイコン間での高速通信が可能となるため、車載機器を迅速に診断することができるほか、CAN-FDインタフェース(16チャネル)およびLINFlex™インタフェース(24チャネル)を搭載しているため、複数のECU(電子制御ユニット)のゲートウェイとしても機能します。さらに、内蔵の2つのイーサネット・インタフェースも介しているため、スマート・ゲートウェイ機能もサポートすることができます。

STのオートモーティブ & ディスクリート・グループ、戦略 / マイクロコントローラ・ビジネス・ユニット ディレクターであるLuca Rodeschiniは、次のようにコメントしています。「さまざまな機能がソフトウェアで制御され、柔軟で便利な先進的な機能に今まで以上にアクセスしやすくなった結果、自動車メーカーによる新車の開発、設計、販売および保守の手法は変化しています。当社の最新かつ最高性能のSPC58 Hラインは、OTAを利用でき、ギガビット速度にまで対応したデュアル・イーサネット・ポートを搭載しているため、シームレスで安全かつセキュアな最先端の車載用通信・制御プラットフォームを実現します。」

コネクテッド・カーの機能を保護し、OTAによる更新を安全に実行するため、SPC58 Hラインには非対称暗号方式に対応したハードウェア・セキュリティ・モジュール(HSM)が搭載されています。また、EVITA Fullに準拠するSPC58 Hラインは、業界をリードする攻撃防御機能や、検知および暗号化機能を実装しています。

SPC58 Hラインは、次世代のスマート・ゲートウェイおよび中央ボディ制御モジュール用としてサンプル出荷中で、バッテリ制御ユニットおよび高度運転支援システム(ADAS)用セーフティ・コントローラ向けの評価も行われています。

技術情報
クラス最高のSPC58 Hラインの新製品であるSPC58NH92xは、10MBのFlashメモリを内蔵しています。また、STの実績あるPower Architecture® z4コアによるトリプル・コアのアーキテクチャ(クロック周波数200MHz、1.2MB以上の内蔵RAM)を採用しており、最高1763 CoreMarkのスコアを記録しています。複数のアプリケーションを1個のマイコンで処理することや、複数のタスクを同時に実行することができるため、柔軟な開発で最適な性能が得られます。また、ASIL-Dの機能安全も実現できます。

SPC58NH92xは、大容量Flashメモリ(10MB)を使用してコンテキスト・スイッチ機能を実行することにより、現在のアプリケーション・コードの実行中に更新プログラムをダウンロードしておき、後で安全に適用することができます。古いソフトウェアを保持し、緊急時用に旧バージョンをロールバックすることも可能です。外部メモリ用の高速インタフェースとしてHyperbusとeMMC/SDIOも搭載されており、必要に応じて容量を拡張することができます。

Chorusマイコン に搭載されているHSMは、実績あるPower Architectureをベースにしているため、設計者は広く蓄積された知見と既存の開発ツールを活用することができます。また、設定可能でスマートな低消費電力モードにより、スタンバイ時にも重要な機能を実行できるため、ハイブリッド自動車や電気自動車など、消費電力が非常に重視されるアプリケーションにおいて、効率向上と低コスト化を実現します。

SPC58NH92xは、STの車載用32bitマイコンのポートフォリオを拡張します。車載アプリケーション向けに最適化された革新的なペリフェラルにより、シングル・コアまたはマルチ・コアのPower Architecture製品を含む32bitマイコンのSPC5ファミリを増強します。

ソフトウェア開発が容易であるSPC58 Hラインには、SPC5 Studio開発環境のほか、すぐに製品に組み込むことが可能なAUTOSAR MCALドライバ、セキュリティ・ファームウェア、およびセーフティ・ライブラリが用意されています。

SPC58NH92xは、さまざまな構成で提供され、参考サンプル価格は約17.00ドルです。現在サンプル出荷中で、2020年中頃に量産開始予定です。

詳細については、www.st.com/spc58-h-line-mcusをご覧ください。

(1)EVITA(E-safety Vehicle Intrusion proTected Applications):欧州委員会が共同出資するプロジェクトで、重要なデータの保護とセキュリティに関わる車載用機器の改竄防止を目的としています。EVITAのアーキテクチャは、Full、MediumおよびLightバージョンが提案されています。