電動自転車ユーザをサポートするパナソニック サイクルテック社 

電動アシスト自転車は、都市型モビリティにおいて、より便利で持続可能な移動手段として登場しました。電動アシスト自転車のユーザ体験を最大化するためには、優れたバッテリ性能はもちろんのこと、より高度な制御機能や付加価値が求められます。このようなニーズに対し、パナソニック サイクルテック社は、タイヤの空気圧低下を推定し、適切な空気入れタイミングをユーザに知らせるスマートな機能を導入しました。きわめて多くのユーザが自転車を使用している一方で、そのほとんどがタイヤの空気圧に無頓着であり、日常的にチェックされていなかったのです。 

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課題

  • タイヤの空気入れタイミングお知らせ機能を搭載した初の電動アシスト自転車の開発
  • 価格への影響の最小化
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ソリューション

  • ハードウェアを変更せずにAI機能を実装
  • STM32F3マイコンとSTの組込みAIソリューションを利用してリアルタイム推定を実行
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効果

  • すべての電動自転車ユーザに安全と快適さを提供
  • 制御機能と付加価値の向上
パナソニック サイクルテック社の加茂広之氏の写真

当社は、STの組込みAIエコシステムを活用することで、タイヤの空気入れタイミングお知らせ機能を初めて搭載した電動アシスト自転車を低コストで実現することができました。

加茂広之 氏, パナソニック サイクルテック社、開発部、ソフト開発課 課長

予知保全機能の重要性

2023年10月、パナソニック サイクルテック社は、タイヤの空気入れタイミングお知らせ機能を搭載した初の電動アシスト自転車「ティモ・A」を発表しました。通学用モデルであるティモ・Aに搭載された理由は、多くの学生が自転車のメンテナンスに無頓着な一方で、きわめて高い頻度で利用されるためです。

 

タイヤの空気入れタイミングお知らせ機能は、車体の軽量化や使いやすさ、デザイン、バッテリ・アシスト距離といった従来の競争軸に、新たな価値を提供します。

組込みAIが実現する低コストのスマート機能

空気圧計を用いてタイヤの空気圧をモニタリングする従来の方法には、大きなコストがかかりました。そこでパナソニック サイクルテック社は、組込みAIを活用して、速度データをもとにリアルタイムで空気圧をモニタリングするシステムを開発しました。

組込みAIにより、お客様のために手ごろな価格を維持しつつ、安全性と快適性の向上に貢献する新機能を実現できました。

加茂広之 氏, パナソニック サイクルテック社、開発部、ソフト開発課 課長

すべてのSTM32マイコンで機械学習モデルを簡単に構築

パナソニック サイクルテック社は、後輪をアシストするモータの回転数と、アシスト量を決定するために前輪にもともと取り付けられているスピード・センサ(磁石とホール・センサを組み合わせた回転数センサ)の情報から、前輪または後輪の空気圧低下を推定する機械学習モデルを開発しました。

 

最大の特徴は、この機械学習モデルが本来アシスト量の制御やモータ制御を行っているSTM32F3マイコンの限られたFlashメモリに実装され、リアルタイムで空気圧の推定を行っている点です。STM32F3マイコンの本来の役割は、アシスト量制御およびモータ制御(ベクトル制御)で、これらの処理がマイコンの動作時間全体のおよそ70%を占めています。そのため、タイヤの空気圧をモニタリングする機能は、限られた動作時間やメモリ容量で実現する必要がありました。このような課題に対する簡単かつ迅速なソリューションとして、パナソニック サイクルテック社はSTが無償で提供する組込みAI開発ツール「STM32Cube.AI」を活用しました。

STのSTM32F3マイコンは、高いコスト競争力をもち、電動アシスト自転車に最適な機能・性能を備えた製品です。
このSTM32F3マイコンとSTM32Cube.AIを組み合わせることで、ハードウェアを変更することなく、革新的なAI機能を簡単に実現することができました。

加茂広之 氏, パナソニック サイクルテック社、開発部、ソフト開発課 課長

ティモ・AのAI機能を実現するSTの組込みAIソリューション

パナソニック サイクルテック社の開発チームは、STM32Cube.AIを用いてニューラル・ネットワーク・モデルの軽量化とメモリ配置の最適化を行い、STM32F3マイコンの限られたFlashメモリに実装しました。

 

路面の振動や風などに起因するノイズ成分の除去やデータのクレンジングに苦労したものの、STM32Cube.AIはきわめて直感的で使いやすいツールでした。

商業的成功へ

パナソニック サイクルテック社の電動アシスト自転車に、STの組込みAIソリューションを活用したスマート機能が搭載されたことは、同社のミッションである「地球にやさしく安全・快適な移動と心躍る楽しさを世界中の人々に届ける」を推進する上で、STM32マイコンとSTM32Cube.AIが新たな付加価値の実現に貢献できたことを実証しています。パナソニック サイクルテック社は、「空気入れタイミングお知らせ機能」を今後より幅広いモデルへと拡大していく準備を進めています。 

パナソニック サイクルテック社について

パナソニック サイクルテック株式会社は、「地球にやさしく安全・快適な移動と心躍る楽しさを世界中の人々に届ける」をミッションに掲げ、1996年に初の電動アシスト自転車「陽のあたる坂道」を発売しました。多様なニーズに合わせた幅広い製品を日本国内市場に展開し、2021年には国内累計出荷台数400万台を達成しました。 

パナソニック社のロゴ(青色文字 & 白色背景)