予知保全戦略の最初の一歩は、モータ故障を検出、分類する枠組みの実装です。 予知保全は、モータの障害を実際に発生する前に対策することで生産コストを下げます。ダウンタイムの削減、生産損失の回避、装置寿命の延長、実際のデータに基づく意思決定の強化が可能となるからです。 しかし、故障の検出と分類には、データの収集や前処理、特徴量エンジニアリングはもとより、機械学習モデルの相互運用性や最適化など、多くの課題が存在します。
このユース・ケースでは、STM32のAIエコシステムが、こうした取り組みをどのように支援できるのかを示します。AIによる詳細で自動化された信号分析により、他に類を見ない信頼性がもたらされ、今後発生する事象に、保全チームが迷いなく対応できるようになる仕組みも明らかにします。
アプローチ
ISE社の
OneX Test Benchを使用して、モータ回転のアンバランス、軸受けの緩みや不具合、軸の偏心など、複数の種類の故障を正確に生成および再現しました。
目標は、
NanoEdge AI Studioを使用して、これらの故障を分類できる機械学習ライブラリを生成することです。 その手順は、次のとおりです。
- まず、NanoEdge AI Studioでデータロガー・ジェネレータを設定し、STEVAL-PROTEUS1に組み込まれた常時稼働センサISM330DHCXを使用して、モータの振動データを継続的に記録します。
- 記録された振動データと、NanoEdge AI Studioのサンプル検索ツールを使用して、このプロジェクトに最適の信号長とデータ・レートの組み合わせを決定します。
- ベンチマーク・プロセスのデータから、NanoEdge AI Studioは、モータの公称状態と4種類の故障を高精度で分類できるライブラリを複数特定しました。
- その中から、NanoEdge AI Studioによる検証手順により、テストで生成した新しいデータセットに対して最適の結果が得られるライブラリを選択しました。
- このライブラリを編集したうえで、ST Bluetooth LE Sensorモバイル・アプリとBluetoothによってSTEVAL-PROTEUSボードに導入します。
上記と同じ手順で、軸の偏心を複数のレベル(0.0mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm)で分類できる、同様のAIモデルも作成できます。
センサ
データ
N-クラス分類(5クラス) - 故障なし
- 回転のアンバランス
- 軸受けの緩み
- 軸受けの不具合
- 軸の偏心
信号長1536(軸あたり512 x 3軸)、クラスあたり約1,500の信号
データ・レート1667Hz、最大測定範囲:8g
結果
故障分類:
99.80%の精度、12.7KバイトのRAM、25.4Kバイトのフラッシュ・メモリ