STは、パワー半導体製品の主要なカテゴリ全てにおいて、継続的に研究・投資を行っている半導体メーカーです。シリコン・ベースのMOSFETやIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)、ワイド・バンドギャップ(WBG)半導体をベースにしたSiC(炭化ケイ素)製品やGaN(窒化ガリウム)など、幅広い製品が含まれています。
プレーナ構造を採用した世界初のパワーMOSFETは、1970年代に導入されました。プレーナ型MOSFETでは、酸化膜形成、不純物注入、レジスト塗布などのさまざまな工程を経て製造されます。
従来の高電圧プレーナ型MOSFETにおいて、ブロッキング電圧またはドレイン・ソース・ブレークダウン電圧(V(BR)DSS)は、厚みとドーピング濃度の相関関係によって決定されます。ブロッキング電圧とドレイン・ソース間オン抵抗(RDS(on))にはトレードオフの関係があり、RDS(on)の下限には物理的限界があります。
電圧を印加すると空乏領域(ドリフト層)が拡大し、ドレイン・ソース間電圧が発生します。ドリフト層の不純物濃度を高めることができないため、高電圧MOSFETには比較的厚いドリフト層が必要となり、その結果としてRDS(on)が上昇します。従来の高電圧プレーナ型MOSFETにおけるブロッキング電圧とオン抵抗の関係は、V(BR)DSS2.5∞RDS(on)として表されます。
スーパージャンクション型MOSFETは、ウェハに深く狭いトレンチをエッチングすることで、プレーナ型MOSFETの制約を克服します。スーパージャンクション構造は、空乏領域の成長を大幅に抑制することで不純物濃度を高め、RDS(on)を低減することができます。
マクスウェルの方程式によれば、電場の傾きは電荷密度rを誘電率eで割った値に等しくなります。
電圧VはEの積分であり、yの関数としての曲線Eの下の網掛け部分です。グラフを比較すると、p型ピラー層の導入によって電界分布が大きく変化し、オフ状態に維持可能な電圧が上昇しています。したがって、一定の電圧にわたってドレイン抵抗率、ひいてはオン抵抗を低く抑えることができます。
STのMDmesh™ パワーMOSFETは、垂直構造と水平構造の20年間にわたる開発により、重要なRDS(on) x面積をはじめとするさまざまな特徴で市場をリードしています。
従来のMDmesh MOSFETシリーズは、きわめて成熟したテクノロジーで、コスト競争力のある幅広いデバイスを提供しています。最新シリーズは、特定の動作条件、回路トポロジ、および電圧範囲において優れた性能と効率を発揮します。MDmesh M6シリーズは、従来のMDmesh M2シリーズに比べて共振コンバータにおける性能が向上しています。
MDmeshトランジスタの進化は、拡大する電力変換アプリケーションにおいて継続的な性能向上を実現しています。統合型ボディ・ダイオードの性能を高める白金イオン注入といったライフタイムを短くする技術の導入もその1つです。また、MDmesh DMシリーズにおける逆回復時間、逆回復電荷、およびdV/dtの改善は、ブリッジ回路やハイパワーの位相シフト回路を必要とするアプリケーションに大きなメリットを提供します。
MDmesh技術は、市場ソリューションの小型化に向けて電力密度の向上を目指し続けています。STのスーパージャンクション技術の最新世代は、高電力密度システムにおけるハードスイッチング・トポロジおよび共振トポロジに最適です。
2022年7月に発表された最新の超高耐圧MDmesh K6シリーズは、クラス最高レベルの性能・効率を実現しています。
スーパージャンクション型MDmeshパワーMOSFETは、特定のアプリケーションにおける性能基準と電力密度の向上に対する幅広いニーズに基づいて開発されています。