NFCチップ

NFCチップ

NFC Chip

近距離無線通信チップ(NFC ICチップまたはNFC ICチップセット)は、対象アプリケーションによってさまざまな方法で使用できる半導体デバイス、つまり集積回路(IC)です。

NFC ICチップは、適切なアンテナに接続されると、2台のデバイス間で近距離ワイヤレス通信を可能にします。また、通信が近距離に限定されることは1つのセキュリティ層を追加することになり、隣接するデバイスのみで相互にNFC経由の通信が可能になります。

NFC技術を使用すると、以下のデバイス間で非接触通信が可能になります。

  • 決済カードと決済端末
  • 2台の電子機器
  • スマートフォンと家電製品

システムの各コンポーネントに組み込まれたNFC ICチップでワイヤレス通信が可能になります。たとえば、NFC ICチップは、キャッシュカードと決済端末に搭載できます。また、パスポートに取り込んで、生体認証データの保存に使用することもできます。

NFC ICチップの仕組み

NFC通信システムには、NFCリーダライタICチップとNFCタグICという2つのパーツがあります。NFCリーダライタICチップは、システムの能動パーツで、情報を「読み込み」(処理して)、特定の応答を引き起こします。また、システムの受動パーツであるNFCタグICに電力を供給し、NFCコマンドを送信します。

NFC技術は、公共交通機関で頻繁に使用されており、利用客はNFC対応のチケットやスマートフォンで運賃を支払います。公共交通機関の例では、NFCリーダライタICチップがバスの決済端末に組み込まれます。NFC受動タグICは切符(またはスマートフォン)内にあり、決済端末が送信するNFCコマンドを受信してそれに応答します。

NFCチップには、NFCリーダライタICNFCタグIC、およびNFCコントローラICチップの3種類があります。

NFCリーダライタICチップ

NFCリーダライタICチップは、通信の開始、NFCタグICへの電力供給と受動タグICへのコマンド送信を磁場を介して行う通信システムのメイン・コントローラとみなすことができます。NFCリーダライタICは、NFCライタとも呼ばれており、データをNFCタグICに書き込むことができます。

通常、NFCリーダライタICチップは、マイクロコントローラと組み合わさり、複数のNFCタグICに電力を供給し、情報通信します。複数のRFプロトコルと機能をサポートするNFCリーダライタICチップは、リーダライタ・モード、ピアツーピア・モード、カード・エミュレーション・モードの3つのモードで使用できます。

NFC reader chip can be used in three different modes

NFCリーダライタICチップは、スマートフォン、決済端末、券売機、自動車のドア・ハンドル、自動車のセンター・コンソール、もしくは自動車または交通アプリケーションなどのより大規模な決済システムの一部、またはゲーム機にしばしば組み込まれています。

NFC reader door handle

たとえば、NFCリーダライタICをドア・ハンドルに組み込むと、承認されているNFC対応スマートフォンをドア・ハンドルに近づけることで、ドアを解錠できます。

NFCタグICチップ

NFCタグICチップは受動デバイスです。アンテナに組み込まれ、NFCリーダライタIC(スマートフォンなど)が発生する磁場からの電力で動作します。

NFCタグICはNFCリーダライタICからの特定の命令に応答します。たとえば、メモリの内容を表示することによって「読み出しコマンド」などの命令に応答できます。パスワード保護、認証、またはタンパ検出がタグICチップに事前に組み込まれている場合は、これらの特定の機能を使用することもできます。

NFCタグICチップは、NFCタッチポイントとして以下のアプリケーションに実装されます。

  • コンスーマ・エンゲージメント
  • 認証
  • 入退室管理
  • 資産管理
  • ホーム・オートメーション
  • スマート・メータ
  • 照明機器

NFC ICチップはプラスチック・フィルムまたは布地に直接実装して、NFCタグICを作ることができます。プリント基板(PCB)に実装するためにプラスチックのパッケージに収納することも可能です。

NFCタグICは、シングル・インタフェースNFCチップとデュアル・インタフェースNFCチップの2種類があります。

シングル・インタフェースNFC ICチップ

シングル・インタフェースNFC ICチップは、NFCタグICに組み込まれている受動デバイスで、NFCシステムのもう一方のパーツであるNFCリーダライタICのみと通信します。タグICとリーダライタが近接しているときに、シングル・インタフェースNFC ICチップは、NFCリーダライタICによって起動され、これらの間でのデータの通信を実現します。

NFCは、NFCタグICとの通信に使用できる唯一のワイヤレス技術です。サイズも小型であるため、ステッカー、ラベル、キー・フォブなどのスペースに制約がある物に簡単に組み込むことができます。

データの読み書き機能に加え、識別および認証アプリケーションに適したタンパ検出メカニズムやデジタル署名などの特定の機能をサポートするNFC ICチップもあります。

Smartphone reading distance of a wine bottle that embeds an NFC tag in its cork

たとえば、コルクにNFCタグICを組み込んだワイン・ボトルの読取り範囲にNFC対応スマートフォンを持ち込むと、NFCリーダライタICはタグICの製造元を確認し、ボトルが開けられていないかどうかを検出できるため、製品の完全性が確保されることになります。

デュアル・インタフェースNFC ICチップ

NFCダイナミック・タグICとも呼ばれるデュアル・インタフェース・タグICは、有線インタフェース(I2Cなど)経由でマイクロコントローラに接続され、NFCワイヤレス・リンクに次ぐ2つ目の通信インタフェースを提供します。

NFCダイナミック・タグICチップを使用すると、NFCダイナミック・タグICが搭載された製品に電力が供給されていない場合でも、2台の電子システム間で双方向ワイヤレス通信が可能になります。

NFCダイナミック・タグICは2台の電子システム間の橋渡しをし、以下のことを実行できます。

  • データのやりとり
  • NFCリーダが作る磁界からエネルギーを取得し、マイクロコントローラに電力を供給

たとえば、電子機器(Bluetooth® LEヘッドセットなど)の読取り範囲にNFC対応スマートフォンを持ち込むと、ユーザが追加操作をすることなく自動的にBluetooth LEペアリングが実行されます。NFCリーダライタIC(スマートフォン)が、ヘッドセットに組み込まれているNFCダイナミック・タグICを検出し、Bluetooth LEペアリングを実現する情報を回収します。

BLE Pairing with a headset

NFCダイナミック・タグICは、品物の状態をモニタリングするためにも使用できます。たとえば、RFIDまたはNFC対応スマートフォンは、洗濯機のNFCタグICに組み込まれている情報を読み取るなど、障害診断を含む電化製品の状態に関する詳細を知ることができます。最近は多くのスマートフォンがNFC接続に対応しているので、消費者製品はNFCダイナミック・タグICを使用することで顧客の製品情報を取得し、モバイル・アプリケーション経由で送信することができ、NFCユーザ体験を拡大できます。

BLE Pairing with washing machine

照明やモータ制御などの特定のアプリケーション向けには、マイクロコントローラと接続しないNFCダイナミック・タグICを設計できます。この場合、ダイナミック・タグICに組み込まれているパルス幅変調インタフェースにより、生産段階または保守時にLEDドライバを設定できます。

Dynamic tag configuration

NFCコントローラICチップ

Contactless smart card

NFCコントローラICチップは、組込みソリューション向けにNFCリーダライタICとNFCタグICの両方の機能を兼ね備えています。以下のNFC対応デバイスによく搭載されています。

  • スマートフォン
  • モバイルPOS(Point of Sales)
  • イーウォレット(電子マネー決済)アプリケーション(キャッシュカード、バスのチケット、健康手帳、会員カードなど)
  • 自動車のデジタル・キー
  • ワイヤレス充電器

NFCコントローラICチップは、セキュア・エレメントやSIMカードの存在により、セキュアな取引を保証し、カード・エミュレーション・モードで動作します。つまり、非接触型スマート・カードとして機能します。

 
NFCリーダライタIC & タグICソリューションを製品に組み込むメリットをご紹介します。
 

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